Leon Science Weekly

サイエンス・ウィークリー|今週の科学

中学生くらいの好奇心向け。宇宙と生物、ふたつの窓から今週の研究をまとめました。

声質は端末に入っている日本語ボイス次第。より自然な音声には後からクラウドTTSも足せる。

01 惑星形成

史上いちばん若い惑星——Elias 2-24 bはまだ「生まれたて」

ハワイのケック天文台のアーカイブ観測から、木星サイズの惑星Elias 2-24 bが確認されました。年齢は100万年未満——これまで知られていた最年少惑星(およそ500万年以上)を大きく下回り、史上いちばん若い惑星だと報告されています。地球からおよそ450光年の若い星のまわりにあり、ガスとちりでできた円盤のすき間の中で、まだ材料を集めながら成長しています。

これまでの惑星形成モデルでは、木星サイズの惑星がこれほど早く、しかも恒星からとても遠い場所(地球と太陽の距離の約55倍)にできるのはむずかしい、と考えられていました。チリのディエゴ・ポルタレス大学などのチームが、The Astrophysical Journal Lettersに報告しました。

円盤(原始惑星系円盤) … 若い星のまわりに残るガスとちりの円盤。惑星の材料になる。
コロナグラフ … 星のまぶしい光をさえぎり、近くの暗い天体を見やすくする装置。

ポイント
  • 年齢100万年未満——確認された惑星では史上最年少クラス
  • 円盤のすき間の中にあり、形成中の姿を直接のぞける
  • 遠い軌道での急速形成は、既存モデルへの挑戦状
NASA / W. M. Keck Observatory · ApJL
02 初期宇宙

JWST、ビッグバン後5億年の銀河がすでに「重元素」をまき散らしていた

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、ビッグバンからおよそ5億年後——いまの宇宙の年齢のおよそ3%のころの銀河3個を調べました。光が銀河のまわりのガスを通り抜けるときの「指紋」を読むと、酸素・炭素・ケイ素など、水素より重い元素がすでに銀河の外へ流れ出していることがわかりました。

最初の宇宙はほとんど水素とヘリウムだけだったはずなのに、思ったより早く「まぜもの」が入っていた、という発見です。最初の星(ポピュレーションIII星)が見つかりにくい理由の一つにもなりそうです。アリゾナ大学などのチームが報告し、Nature Astronomyに掲載されました。

重元素(金属) … 天文学では、水素とヘリウム以外の元素をまとめてこう呼ぶ。
ポピュレーションIII星 … ほぼ水素とヘリウムだけでできた、宇宙最初の世代の星。まだ直接は見つかっていない。

ポイント
  • 宇宙年齢およそ3%の時代に、すでに酸素や炭素が銀河の外へ
  • 初期銀河が重元素を「まき散らし」、まわりを豊かにしていった
  • 純水素の環境を探すPOP III星探査にも影響する発見
アリゾナ大学 / Nature Astronomy
03 銀河中心

JWST、銀河中心ブラックホール近くの星に「水」を発見

天の川銀河のまんなかには、いて座A*(サジタリウス・エー・スター)という巨大ブラックホールがあります。そのすぐ近く、わずか約0.55光年のところに、年老いた星IRS 3があります(地球からはおよそ2万6000光年)。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中間赤外線装置MIRIで調べたところ、この星のまわりのガスやちりの雲に、酸素を多く含むちりと、初めてはっきりした水の痕跡が見つかりました。ブラックホール近くの強い光や重力のもとでも、星はちりや分子をつくり続け、まわりにまき散らせることがわかりました。

いて座A* … 天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール。
AGB星 … 寿命の終わり近くでふくらみ、風とともにガスやちりを吐き出す星。将来の星や惑星の材料になる。

ポイント
  • 銀河中心ブラックホールから約0.55光年の星IRS 3をJWST/MIRIで観測
  • 酸素リッチなちりに加え、この星で初めて水を検出
  • きびしい環境でも、星は材料をまわりにまき散らせる
ESA/Webb · ケルン大学 / Astronomy & Astrophysics
04 太陽系外縁

JWSTとハッブル、海王星の向こうで微小な氷の世界を27個発見

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とハッブル宇宙望遠鏡が力を合わせ、海王星より遠くを回る太陽系外縁天体(TNO)を調べました。これまで地上望遠鏡では捕まえにくかった、とても暗い小さな天体が27個新たに見つかり、いちばん小さいものは直径およそ5kmほどと見積もられています。

そのうち13個については、可視光から近赤外線までの色も測れました。小さな天体でも、大きな仲間と同じ色の傾向が続いていて、太陽系ができたころの材料の「記憶」が表面に残っている、という解釈が示されています。予想より小さな天体の数が少ないこともわかり、微惑星のでき方を考える新しい手がかりです。

太陽系外縁天体(TNO) … 海王星より外側を回る、氷や岩石の小さな天体。カイパーベルトの仲間も含む。
微惑星 … 惑星ができる途中の、ちりが集まってできた小さな天体。

ポイント
  • JWST+ハッブルで、直径数km級の暗いTNOを27個発見
  • 小さな天体にも大型と同じ「色の系列」が続く
  • 太陽系初期の微惑星形成モデルへの新しい制約
NASA / ビクトリア大学・ノーザンアリゾナ大学 · The Astronomical Journal
05 系外惑星

TOI-1355b、熱い星のまわりを「ゆがんだ軌道」で回るホットジュピター

太陽系からおよそ800光年、太陽より約3000℃も高温の恒星TOI-1355(表面温度およそ8400℃)のまわりで、ホットジュピターTOI-1355bが見つかりました。公転周期はおよそ2日、質量は木星の約5.8倍です。

熱い恒星のまわりのホットジュピターはほとんど円軌道なのに、この惑星はややゆがんだ楕円軌道を描いています。遠いところで生まれ、軌道がゆがんでから恒星の近くへ移動した——「高離心率移動」という考えを裏づける発見です。さらに軌道が少しずつ傾く現象も見つかり、トランジット観測はおよそ2033年半ば以降むずかしくなる可能性があり、あと約7年の猶予だと報告されています。

ホットジュピター … 恒星のすぐ近くを10日以内に公転する、木星サイズの系外惑星。
トランジット … 惑星が恒星の手前を横切って、わずかに暗く見える現象。発見や大気観測に使う。

ポイント
  • 熱い星まわりでは珍しい、楕円軌道のホットジュピター
  • 高離心率移動(遠方誕生→軌道ゆがみ→接近)を裏づける
  • トランジット観測のタイムリミットはあと約7年
東京大学 / Publications of the Astronomical Society of Japan
06 初期宇宙

アテルイIII、JWSTの「小さく赤い点」は急成長ブラックホール

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、宇宙誕生後まだ10億年もたっていない時代に見つけた小さく赤い天体——リトル・レッド・ドット(Little Red Dot)。その正体に、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータアテルイIIIを使ったシミュレーションが迫りました。

若い宇宙では、近くの明るい銀河からの強い紫外線で星がたくさんできにくくなり、かわりに太陽のおよそ50万〜90万倍もの超大質量星ができ、それがブラックホールの「種」になります。まわりの濃いガス円盤からガスをたくさん取り込むと、いまの宇宙ではむずかしいほどの速さで成長し、赤く見える姿は観測とよく一致しました。

リトル・レッド・ドット … JWSTが初期宇宙で多数見つけた、小さくてとても赤い謎の天体。
アテルイIII … 国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ。巨大な宇宙の計算に使う。

ポイント
  • LRD=ガスに包まれた急成長ブラックホール、という一貫シナリオ
  • 超大質量星→種ブラックホール→過大質量へ、特殊仮定なしで再現
  • いまの銀河中心の巨大ブラックホール誕生史への手がかり
国立天文台 / マックス・プランク天体物理学研究所 · MPA
07 星形成

JWST、木星2個分の「いちばん軽い」褐色矮星

地球からおよそ1000光年の星のゆりかごIC 348(ペルセウス座)を、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がくわしく調べました。そこで見つかったのは、木星のおよそ2倍の重さしかない褐色矮星です。

ふつうの星よりずっと軽く、中心で水素を燃やすほど熱くなりません。これほど軽いものが星と同じように雲のつぶからできるのか——星のでき方の下限を考え直す発見です。いちばん軽いもののひとつには、まわりに円盤の気配もあり、惑星づくりの材料まで持っている可能性があります。

褐色矮星 … 星と巨大ガス惑星のあいだの天体。水素の核融合は続かない。
IC 348 … 若い星がたくさん生まれる星形成領域。JWSTの大きなパノラマでも注目された。

ポイント
  • 木星約2個分——既知でいちばん軽いクラスの褐色矮星
  • 星形成の「どこまで小さくできるか」に新制約
  • 軽い天体にも円盤——惑星材料の可能性
ESA/Webb · NASA/CSA / ApJL
08 太陽系

JWST、小さな天体カリクローの環が「変化」中

土星と天王星のあいだを回る天体カリクロー(直径およそ250km)は、小さな体なのに二つの環を持っています。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、星の光がカリクローの手前を通過する瞬間を精密に測ったところ、この十年ほどで環のようすが変わっていることがわかりました。

内側の環は以前より光を通しにくく(不透明度アップ)、外側の環は通しやすくなっていました。小さな天体の環も「固定」ではなく、でき方や保ち方を考え直すきっかけになる発見です。

カリクロー … 土星〜天王星のあいだを回る「ケンタウルス族」の天体。2013年に環が発見された。
掩蔽(えんぺい) … 天体が星の前を横切って光を一時的に遮ること。環の厚さや濃さを測るのに使う。

ポイント
  • 小さな天体でも、環は時間とともに変化しうる
  • JWST+星の掩蔽で、直接撮影できない細部を読む
  • 環のでき方・安定のしくみを見直す手がかり
IAA-CSIC / Science Advances
09 宇宙化学

リュウグウ試料に「しょっぱい水」と窒素の痕跡

探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った試料を詳しく調べたところ、かつて塩分の高い液体が存在した痕跡や、塩の結晶の近くに窒素を含む成分があることが報告されました。

窒素はアミノ酸など、生命の材料になりうる分子の材料にもなります。ただし、これは「生命そのものが見つかった」という意味ではありません。太陽系の初期に、生命の材料につながる化学反応が起きうる環境があった——という証拠の一つです。

窒素化合物 … 窒素(N)を含む分子。タンパク質やDNAの材料に関係することが多い。

ポイント
  • 塩結晶付近に窒素成分——高塩分水の化学を示唆
  • 生命の「材料」のヒントであり、生命発見ではない
  • はやぶさ2試料ならではの、直接分析の強み
京都大学 / Nature Astronomy
10 惑星科学

リュウグウの母天体は、太陽系誕生期の古さ

リュウグウ自体は比較的若い衝突でできた破片ですが、そのもとになった天体(母天体)がいつできたのかは重要な問いです。試料の同位体などを手がかりに形成時期を推定すると、太陽系が形成されはじめたころ——およそ46億年前前後にさかのぼる、という結果が示されています。

地球や太陽もまだできはじめの時代です。遠い昔の石を研究室で測れるのは、太陽系の初期年表を手元で読むようなものです。

母天体(ぼてんたい) … いまの小惑星のかけらの「親」にあたる、より大きな天体。
同位体 … 同じ元素でも中性子の数が違う原子。時計のように年齢推定に使われる。

ポイント
  • 試料分析から母天体の形成時期を推定
  • 約46億年前=太陽系誕生期のタイムスタンプ
  • 初期太陽系の物質循環を探る手がかりになる
北海道大学